月面X

月面Xについて

上弦の月のころ、月面の欠けぎわにアルファベットの「X」のような地形が見えることがあります。この現象が月面Xで、近くのヴェルナー(Werner)クレーターの名前から外国では「WernerX」や「LunarX」などと呼ばれます。月面Xは以前から見られていたようですが、2004年にカナダのChapman氏らによって報告されたことにより、広く知られるようになりました。

月面Xは上弦のたびに見えるわけではありません。継続時間が1時間程度と短いので、ちょうどこのタイミングで日本から月が見やすい位置にある時にのみ見ることができます。大体1年に数回程度でしょうか。詳細は下の「月面Xの予報」をご覧ください。


2013. 1.19 17時54分  FS102 + エクステンダー + キヤノン60D 太陽高度1.56°
 2012.10.22 20時36分  FS102 + エクステンダー + キヤノン60D 太陽高度1.41°

月面Xの予報 (2016年)

月日 ピークになる時刻 月の高度(大阪) 見やすさ 備 考
2/15 22時頃 34°
4/14 23時頃 27°
6/12 21時30分頃 33°
8/10 20時30分頃 27°
10/ 8 22時頃 月が低い

月面Xは厳密な予報が適当な現象ではないため、「ピークになる時刻」はおおよそ30分毎としました。ピークの時刻を少し過ぎたほうが月面Xは太くて明るく見えるので、小さな望遠鏡や望遠レンズでも捕らえやすいようです。
月の高度はステラナビゲータVer.9(アストロアーツ)により求めました。地域によって月の高度は異なります。
「見やすさ」は夜間や日没頃の場合「○」、日没まで少し時間がある場合「△」、昼間の場合は「×」としました。
10/ 8は夜間ですが、ピーク時の月の高度が低いため「△」にしました。少し早めの時刻から、主に現象の前半部分を見るようにしてください。

(管理人の個人的な予報なので参考としてご覧ください。)

月面Xの変化

月面Xはこの地域が夜明けを迎え、太陽が昇るのにつれてだんだんと姿を現す様子を見ていることになります。月面Xが見えるのは約1時間程度とされます。しかし実際に望遠鏡で拡大してみると月面Xはいびつな形をしており、どの時点で「X」に見えているのか、というのはよくわかりません。「X」になる前にアルファベットの「T」や漢字の「火」のように見えるタイミングがあります。また「X」の交点近くに大きなくぼみのような地形があって邪魔になり、なかなか「X」はつながりません。

下の画像は2014. 11.29撮影の月面Xの変化です。それぞれの画像に撮影時刻とヴェルナーにおける太陽高度を記載しました。 また( )内は月面Xにおける太陽高度、「」内は各太陽高度に対応する「X stage」の名称です。経過時間は今回の月面Xのピークの時刻からの時間差を記載しました。

ヴェルナーにおける太陽高度が約1.4度になると月面Xはピークを迎えると言われるので、この日のピークは18時57分頃だったと思われます。(下から5枚目の画像)
タカハシミューロン250 + DMK21AU618 + Baader IR-Pass

16:16:45
太陽高度 0.19°(-1.91°)
「First pinprick of light」
経過時間 -02h41m
16:34:05
 太陽高度 0.34°(-1.76°)
経過時間 -02h23m
16:51:03
 太陽高度 0.46°(-1.63°)
経過時間 -02h06m
17:09:47
 太陽高度 0.60°(-1.49°)
経過時間 -01h48m
17:26:30
 太陽高度 0.72°(-1.36°)
「"T" or partial X」
経過時間 -01h31m
17:40:48
 太陽高度 0.83°(-1.26°)
経過時間 -01h17m
18:04:07
 太陽高度 1.01°(-1.07°)
経過時間 -00h53m
18:21:42
 太陽高度 1.13°(-0.94°)
経過時間 -00h36m
18:30:42
 太陽高度 1.20°(-0.87°)
「earliest X」
経過時間 -00h27m
18:40:29
 太陽高度 1.27°(-0.80°)
経過時間 -00h17m
18:57:36
 太陽高度 1.40°(-0.67°)
「peak X」
経過時間 00h00m
19:22:34
 太陽高度 1.59°(-0.48°)
「latest X」
経過時間 +00h25m
19:53:44
 太陽高度 1.82°(-0.24°)
経過時間 +00h56m
20:21:20
 太陽高度 2.02°(-0.03°)
経過時間 +01h24m
20:59:00
 太陽高度 2.31°(+0.26°)
「surroundings filled in 」
経過時間 +02h02m




上の15枚の画像をアニメーションにしました。


月面Xの正体

月面Xはブランキヌス、プールバッハ、ラカーユの各クレーターの外壁が太陽光に照らされて輝いている姿です。この付近が夜明けを迎える頃、周囲はまだ真っ暗ですがこの壁面の高い所にだけ光が当たりはじめ、それがたまたまXのような形に見えます。下の画像の白い線で囲んだヒトデのような地形です。

 ミューロン250 + 笠井1.5倍バロー + ASI 120MM   2015. 3 撮影
同 上  文字、線なし

月面Xの撮影

月面Xは月の欠けぎわギリギリに見え、あまり明るくありません。ですから月全体に露出を合わせて写しても、月面Xのあたりは露出不足でうまく写ってくれません。こういう場合は月の明るい部分(上弦の月の丸い側)が露出オーバーになるくらい露出をかけるか、撮影後に画像処理で欠けぎわの暗い部分を持ち上げるようにします。また拡大撮影できる機材であれば、月の明るい部分を写野の外に出すような構図をとり、たっぷり露出をかけます。
ピークとされる時刻を過ぎると月面Xは次第に大きくて太く、明るくなっていきますが、こういったタイミングのほうが写しやすいように思います。

以下は2013. 3.19と2013.1.19の月面Xの拡大画像です。

2013. 3.19 20:54:21 ミューロン250 + Baader IR-Pass + DMK31AU03 
太陽高度 1.18°(-0.89°)「earliest X」
2013. 1.19 17:57:46 ミューロン250 + 笠井1.5倍バロー + DMK21AU618 
太陽高度 1.59°(-0.46°)「latest X」
2013. 1.19 18:32:37 ミューロン250 + Baader IR-Pass + DMK31AU03 太陽高度 1.85°(-0.20°)
2013. 1.19 19:31:02 ミューロン250 + 2倍バロー + DMK21AU618 
太陽高度 2.28°(+0.24°)「surroundings filled in 」
 
2013. 1.19 18:27:57 ミューロン250 + 3倍バロー + DMK21AU618 
太陽高度 1.81°(-0.24°)

下の画像は月面Xのピークの時刻から約9時間後のヴェルナー付近の様子です。月面Xを取り囲むブランキヌスとラ・カーユが明け、プルバッハの輪郭が現れています。この時のヴェルナーにおける太陽高度は5.38°です。
2016. 5.14 19:20:50 ミューロン250 + 1.5倍バロー + ASI 120MM-s



下の画像は月面Xのピークの時刻から約4時間後のヴェルナー付近の様子です。「X」の文字は太くなり、すぐ東側のブランキヌスクレーターが明けてきています。このときのヴェルナーにおける太陽高度は3.18°です。
2015. 4.16 18:14:16 ミューロン250 + ASI 120MM

 
  2013. 9.12 18時17分  FS102 + エクステンダー + キヤノン60D 太陽高度2.30°
ちょうど日没頃の明るい空での撮影で、月面Xのピークの時刻からは約2時間経過しています。ピークの時刻を少し過ぎたほうが月面Xは大きく、明るくなるので写しやすくなります。ただし拡大すると下の画像のように、綺麗な「X」には見えません。


2013. 9.12 18時17分  FS102 + エクステンダー + キヤノン60D 太陽高度2.30°

以下のサイトを参考にしました。
The Moon Wiki - Lunar X
Journal of the Royal Astronomical Society of Canada P51以降にChapman氏の記事があります。
「月面X」 山田陽志郎氏の個人サイト。旧横浜こども宇宙科学館の「月面X」のページのリニューアル版。

注1. 太陽高度は次のページより求めました。
https://the-moon.wikispaces.com/Sun+angle
太陽高度はヴェルナー(28.1S, 3.3E)における値と月面Xにおける値を求めました。Chapman氏が前者を、mooon.wikiが後者を用いて、それぞれ月面Xの変化を検証しています。月面Xの起こる場所はmooon.wikiより(25.2-3S, 0.9E)としましたが、Chapman氏は(25.5S, 1.1E)としています。

記事中の太陽高度はヴェルナーにおける値を記載しました。 なお( )内は月面Xにおける太陽高度、「」内は各太陽高度に対応する「X stage」の名称です。

画像の向き
白黒の拡大画像は天体望遠鏡で見た場合と同じく南を上にしています。
一番上と一番下のカラー画像各2枚は拡大率が低いので、肉眼と同じく北を上にしています。